001ー3:里璃、神那津川学園に初登校

久々の小説更新。
次辺りから本番シーンが入りますです。
長い、なんという前置き/(^o^)\


 


001ー3:里璃、神那津川学園に初登校    (1-11-2
(逃げなきゃ……逃げなきゃ……!)
まるで怖いモノから逃げるように、私は学園の廊下を全力疾走する。
まだ案内もして貰っていない校舎内を、私は当ても無く走り続ける。
(逃げなきゃ……あれ……なんで私、逃げてるんだろう……)
無意識に走り出してしまった自分を、今頃になって不思議に思う私。
(はぁはぁ……戻らなきゃ……戻って自己紹介しなきゃ……)
[小説]里璃、神那津川学園に初登校_3-1
「はぁ……はぁ……うッ……げほっごほっ!」
過呼吸によりむせてしまう私。
膝に手を付き、身体を休めつつ息を整える。
全身汗まみれになり、折角の新しい制服も台なしだ。
(はぁ……どうしよう……)
今頃、教室にいた皆は私を探し回ってたりするんだろうか……
とりあえず顔を洗おうと、私は廊下に設置された水道の前に立つ。
蛇口に手を伸ばした所で、ふと鏡に目が行く。
汗にまみれ真っ赤になった私の顔。あ~あ、酷い顔してるなぁ……
そして、普通では有り得ない程に長い耳。
私の耳って、外から見るとこんな目立ってるんだ……
どうして私だけこんな耳が付いてるんだろ……コレのせいで私は……
前の学校では、生徒達とまともに接する事が出来なかった私。
こんな耳を持ってるせいで、私は普通の女の子として扱われなかった。
クラスの皆からは気味悪がられ、陰湿ないじめを沢山受けてきた私。
悪口を言われたり……そういえばさっき私がクラスの前で自己紹介してた時も、そんな声が聞こえたような気がする……
それが本当に彼女たちから発せられた声だったのか、私の忌まわしい記憶による幻聴だったのか、今となっては判断出来ないことだった。
[小説]里璃、神那津川学園に初登校_3-2
「ぅ……ぅ……ぐす……」
鏡に映る自分の顔を見て、私は泣き出してしまう。
耳……やっぱりこの耳が悪いんだ。
こんな耳が付いてるから、どこに行ってもうまくやれないんだ。
どうしよう、涙が止まらないよぉ。
『私はもう大丈夫だから! お母さんももう心配しなくていいよ!』
『私、お友達一杯作るから! それでお家に招待するんだから!』
そういえばそんな事言ったっけ私。
お母さん、お兄ちゃん、ごめんなさい。
やっぱり私……ムリだよ……
「おい、そこのお前!」
甲高い怒鳴り声にビクッと震え、無意識に声の方に振り向く。
[小説]里璃、神那津川学園に初登校_3-3
「今はHRの時間だろ? こんな所で何を……」
小さな子供が腕を組み、ジッと私を睨んでいた。
小学生? ロングの金髪に金色の瞳。外国人のハーフ?
「何だ、酷い顔だなお前。ん、その長い耳……」
いけない……今の私、涙でぐしょぐしょの顔だった。
そんな私の顔をジッと見つめる少女。
いや、正確にいうと彼女が見ているのは私の顔じゃない。
この忌まわしい耳だ。やっぱり気になるよね。
初対面の人間は、誰もがまずこの耳に目が行くのだ。
はぁ……やっぱりこの子も気味悪がったりするのかな?
何て事を考えていると、その少女はいつの間にかすぐ目の前に立ち、私の顔に向けて両手を伸ばしていた。
――さわっ♪
「ひにゃあああんっ?!」
強烈な刺激が左右の耳から脳髄に行き渡る。
私は猫みたいな悲鳴を上げ、全身を跳ね上がらせる。
この子、いきなり私の耳を触ってきた。初対面なのに!
「あう……ぁ……あぅ……」
いけない! 今、物凄い変な声が出ちゃった……ぅぅ、恥ずかしいよぉ……
「アハハ! ちょっと触っただけなのに、お前面白いなぁ!」
「わ、笑わないでよぉ! ぐす……」
ケラケラと笑うその姿は、無邪気な子供そのものだ。
一体誰なんだろうこの子……制服も違うみたいだし、この学校の子じゃないのかな?
「よしお前、生徒会に入れ!」
私の顔を指差し、私にそう言う彼女。
唐突の勧誘に思考が追いつかない私。
いや、それは断じて勧誘などではなかった。そう命令だ。
目の前の小さな(と言っても私と殆ど同じ身長だが……ぐすっ)少女は、私に指を差し命令してきたのだ。
あまりの事に、無意識に問い返してしまう私。
「ふぇ……? な……なんで?」
「何でって、面白そうだからに決まってるだろ。ほら来なよ!」
私の腕を引っ張って歩く彼女。
「わっ! ちょ、ちょっと!」
[小説]里璃、神那津川学園に初登校_3-4
慌てて歩く私に対して、彼女はすごく綺麗な笑顔で言った。
「ボク、愚民の群に埋没しない個性のあるヤツって結構好きなんだよ。内面的なものでも外面的なものでもね。ボクの眼鏡にかなったってことを光栄に思うといいよ」
なにかものすごい物言い……綺麗な笑顔が台無しだ。
この子、さっきからタメ口だけど、どう見ても小学生にしか見えない。
それに私と全然違う制服だし……ひょっとして私、小等部の校舎まで来ちゃったのかな?
まあ、他人の事を愚民とか言ったり、結構おかしいところもあるけれど……
でもこの子、言い方とかはともかく、私の耳を誉めてくれたんだ。
今まで家族にしか誉められたことなんてなかったのに。
私の事を気味悪がらずに接してくれるなんて、こんなこと初めてだった。
(もしかしてこの子となら、お友達になれるかな?)
少しだけそんな期待をした私だが、すぐにそれが愚かだったと知る事になる。

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